90%
月は腕時計を見ると、凝った背中をほぐすように伸びをした。
ここ、キラ捜査本部の椅子はかなり快適だが、それでも疲労は溜まる。
もうすぐ夜の12時。月がキラ捜査に参加してから三日、つまりは月と竜崎の
手錠生活三日目が終わろうとしていた。
「そろそろ寝るぞ」
「早寝早起きですね」
竜崎には決まった時間に睡眠を取る習慣が無かったが、そこは月の生活リズムに
合わせてもらうことになっていた。ジャラジャラと鎖を鳴らしながら寝室へと向かう。
月は歯を磨き、顔を洗い、寝間着に着替えた。手錠と鎖は邪魔だが、徐々に慣れて
日常的な動作なら支障なく行えるようになっていた。
竜崎はというと、いつもの姿勢でベッドの上に座り、資料を広げ一心不乱に読んでいた。
それを邪魔せぬよう電灯はつけたままで、月はベッドに横たわった。
「ん…」
ふと目を覚ませば、暗い部屋に自分一人。まだ夜明け前だ。
もう一眠りしようと、寝返りをうつと。
黒い影が、月の目の前にうずくまっていた。
ここは不審者が侵入できる場所ではないし、こんな事をする人間は一人しか思い当たらない。
「…竜崎、何やってるんだ」
「月くんの寝顔を観察していました」
「………何で」
「いえ、少し気になっただけです」
前言撤回。不審者はこの場所にいた。
月は起き上がると、無言で竜崎を突き飛ばした。不安定な姿勢の竜崎はごろり、
とベッドから落ちた。
「ひどいですね」
竜崎はそう言いながら、のそのそと自分のベッドに移っていった。
ひどいも何もない。月は非常に不機嫌だった。ふん、と背を向けて寝具にもぐりこんだ。
「月くん」
「何だ」
振り返らず、ぶっきらぼうに答える。
「私は90%の確率で、月くんを好きです」
「…残りの10%は」
「月くんがキラだったらどうしよう、という不安です」
結局100%じゃないか。
身の危険を感じ、掛け布団を掴んでしっかりとくるまる。
この先を考えて、月は深くため息をついた。