安眠

ジリリリリリリリリ。
目覚まし時計が容赦なく朝の7時を告げる。月は寝不足のだるさと戦い、
手探りで時計を止めた。一瞬まどろみかけたところで、背中に暖かい物を感じ、
月は朝から情けない気分になった。

「いいかげん怒るぞ」
竜崎が膝を抱いて丸まり、月に寄り添って眠っていた。


月は竜崎を床に正座させると、詰問を始めた。
正座は嫌です、というのを無理矢理座らせる。慣れぬ座り方に落ち着かない様子だが、
それぐらいのことでは月の気が収まらない。
「私は普段、椅子で眠ります」
「で?」
「ですから、ベッドや布団は嫌いなのです。それで困っていたのですが」
それで、と横柄に先を促す。
「しかし月くんと一緒ならよく眠れる、ということを発見しました」
ああ、と月はうなだれるしかなかった。
「おかげで非常に快適です」
この野郎、蹴り飛ばしてやろうか。月らしくない暴力的な衝動が沸き上がる。
それをなんとか抑えて、竜崎に頼み込む。
「…やっぱりこの手錠、外してくれないか。それか別の部屋で寝たい」
「それは色んな意味で駄目です」
月の中で何かが切れた。
「だったら竜崎、夜は目隠しに猿ぐつわに拘束衣を着ろ!
 僕に近寄るな! 僕の安眠を邪魔するな!」
一息に言い切り、ぜえはあ、とあえぐ。

「緊縛ですか。意外と大胆ですね」
無力感が肩に重くのしかかる。
世界三大探偵の責務を一人で担っているのが、こんな男だったなんて…。

憔悴しきった月を不思議そうに見上げ、大丈夫です、と竜崎が言う。
「私なら、月くんがどんな趣味であろうと対応できる自信があります」
うるさい。
月は竜崎を蹴り転がすと、首根っこをずるずる引きずりながら朝食を採りに向かった。
負けるものか。泣きたい気分の中、一刻も早くキラを捕えようと決意を新たにする。

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