戯れる、二人で
息も凍る冬のある日。夜神月はLを騙し、家族をも騙し、窮地を潜り抜けられたことに安堵していた。
どうやら自分の部屋の監視カメラは外され、尾行もついていないらしい。
液晶テレビだろうが何だろうが、キラとして犯罪者を処刑することには代え難い。
―――そして次の一手は、Lに打撃を与えるものでなくてはならない。
「なあ月、もう盗聴器もついてないんじゃないのか?」
死神リュークが部屋のあちらこちらに顔を突っ込みながら言う。
「ああ、捜査の目は他に向けられたみたいだしな。例え一時的にしても」
もし彼との会話が記録されていたら、自分はキラ候補から外されていたかもしれない。
“精神に変調をきたしている”と見なされて。ふと月はそう思った。
自分にだけ見える存在、死神リューク。月はデスノートの力も死神の存在も疑ってはいないが、
それでも自分が見ているのは幻なのではないかと考えてしまうことがあった。
そんな時、決まってリュークは月の気を引こうとするのであった。
監視されるってのはまったく肩が凝るぜ、と言いながら次々とリンゴをむさぼるリューク。
彼の活躍があったからこそLを出し抜けたと言っても過言ではない。
無理を強いて我慢させていた後ろめたさもあり、月はいつもより高級なリンゴを買ってきたのだった。
もちろん不自然でないように、母に頼まれた沢山の食材に紛れ込ませて。
(さて、後は接待マリオカートでもやれば気が済むだろう)
着替えようと制服の上着を脱いだところで、突然ひやりとした物に体を包まれた。
背後から、リュークの腕が月を抱いていた。
「俺はもう少し褒美が欲しいんだけどな」
そのまま体を持ち上げられ、ベッドの上に投げ出される。リュークは仰向けになった月の両腕を
掴み、抗えぬよう頭の上で押さえつけた。月の間近で光る金属質の眼。くくく、と喉で笑う声。
「好きにすれば?」
月は抗いもせず冷淡に答える。
死神は交尾―――セックスをしない。子ができるわけでもないし、性感があるわけでもない。
だが人間はセックスが大好きだ。子孫を残すという目的より、その手段としてのセックスを。
地上にはセックスの情報があふれている。そのくせ、そうであることを隠そうとする。
死神にはわからない人間の矛盾。リュークはすっかりこの行為に興味を持ってしまったらしい。
裾へ向かって、シャツのボタンがリュークの手で一つずつ外されていく。白い肌が露わになると、
リュークは月のへそから首元まで、長く青い舌でべろりと舐めあげた。
「んっ…」
氷のような冷たさが逆に血潮をたぎらせる。頬には朱が差し、息が荒く甘くなる。
そして、月自身が固く張り詰めようとしていた。
二人にとってこれが始めてのことではない。人間が何故こんなにも様変わりするのか、
リュークは月の反応を見て楽しむようになっていた。
リュークは片手で月の手を押さえつけたまま、もう一方の手を胸元に伸ばす。
尖った指先が胸の赤く色づいた突起に触れる。刺激によって形を変えたそれをつまめば、
必死で押し殺していた官能の声が漏れる。
「ふっ…ああっ」
ただの飾りに過ぎない器官が、この男をこんなにも乱す。
月の目は潤み、どこか遠くを見ている。その姿はひどく淫らで、きっとどんな人間でも
堕落させられるだろう、とリュークは思った。
月の自由を奪ったまま、リュークはあくまでも焦らす。唇、耳、喉、胸…敏感な箇所を一つずつ
塗りつぶすかのように舐めていき、反応を楽しむ。
死神にその身をもてあそばれ、行き場の無い熱が体中を駆け巡る。屈辱を感じながらも、
月に選択肢は無かった。
「リューク、頼む、頼むから…」
「頼むから?」
「…もう楽にしてくれないか」
「よくしてくれないか、の間違いだろ?」
嘲りながらも、リュークは月の腕を放し、今度は下腹部に手をかけた。ズボンの前をこじ開け、
しとどに濡れた月のそれを手に包む。死神の堅く節くれ立った指に、月は奇妙な快感を感じていた。
「はっ…ん、ふっ」
月の弱い箇所を知り尽くした動きが彼を絶頂へと追い詰めていく。
そして白い精液が、リュークの掌中で散った。
欲望を放った月は息を荒げ、力の抜けた四肢をベッドに投げ出していた。赤く染まった目。
涙に濡れた頬。普段の月からは想像もつかないその姿。リュークは月をまじまじと見つめていた。
これはこれで、いいかもしれない。