ライドウのバカ。バカバカバーカ。もっかい言っちゃお。ライドウのバーカ。
ボクを置いてくなんてありえない。どこ行ったのさ。捜しに行ってやってもいいけど、この辺って強い悪魔が多いんだよね。…怖いわけじゃないよ。ほんとだってば。でもこのままライドウと離れ離れは嫌だな。また一緒にアイスクリン食べたいし。
『あまり食うと腹を壊すぞ、アガシオン』
そんなこと言っても、ちゃんとボクの好きなミントの葉っぱくれるんだ、ライドウは。
どうしよう。やっぱりライドウに会いたいよ。…逆さまになって浮かんでたら、何か思いつくかな。
って考えてたら突然、後ろから声をかけられたんだ。
「ねえ、君」
体が飛び出ちゃいそうなほどビックリした。だってそこには“あのお方”がいたんだもの。
どうしてこんなところに!? どうしよう!? 驚き過ぎて動けなくなっちゃったボクの頭に、“あのお方”が手の平をかざした。
ボクの目は開いたままなのに、こことは違う場所が見える。ライドウがいる。ゴウトがいる。
…ライドウ、ボクのこと捜してるんだ。
「行き方はわかるね?」
ボクがうなずくと、“あのお方”はにっこり笑った。すごく嬉しそうで優しい顔だったから、ボクはさっきよりもビックリしちゃったんだ。
「それと、君に預かってもらいたい物があるんだ」
ヤギの飾りがついたカバンを開いて、“あのお方”は何かごそごそ探してる。噂で聞いたことあるんだよ、あの“誘惑のバッグ”にはすごく危ないモノとすごくきれいなモノが入ってるって。
“あのお方”がボクに渡してくれたのは、きれいな黒い宝石だった。これ、いつもライドウが欲しいって言ってるやつだ。
「彼が君のことを大事にしてくれたら、これを渡してほしい」
夢じゃないよね? “あのお方”がボクの頭をなでてくれてる!
「いいかい、これの事も私の事も、彼に喋ってはいけないよ」
うん。ちゃんと約束するよ。でも、どうして?
…つい質問しちゃった。怒られるかなあ…。
“あのお方”はちょっと困ったような顔をして、それからこう言った。
「君がお父上のような魔王になりたいなら、覚えておくといい。人間が成長するように、こっそり手を貸すのも悪魔の務めなんだよ」
悪魔の務め…。なんか難しいけど、大事なことなんだよね。
「そう、これを『手の平で転がす』と言うのさ」
それ、聞いたことある! そっか、そういうことなんだ。
うんうん、と納得しているボクの頭を、もう一度優しくなでてくれた。
「さあ、お行き」
“あのお方”の手に押され、ふわりと体が流される。振り返っても、もう“あのお方”の姿はなかった。
…ほんとにしかたないなあ、ライドウは。いつかボクが立派なマオウになったら、家来にしてやんなきゃ。アイスクリンも大学芋も、好きなだけ食べさせてやるんだから!