戦士たちの肖像
「うわぁ、よくできてますね」
「おっ、これ俺? かっこいいじゃん!」
「ちょっと恥ずかしいがな…」
テーブルを取り囲んで騒いでいるのは、かつて光の戦士として戦った三人の男たちであった。
ここはサスーン城にあるイングズの自室。意外と手狭だが、几帳面な彼らしく部屋はすっきりと
整えられていた。呼び出されたルーネスとアルクゥが見たのは、手のひらほどの高さの小さな人形。
それは手紙とともにドワーフの島から送られてきたものだった。
『光の戦士 助けてくれてありがとう。
感謝の気持ちで でっかい銅像つくる。
小さいの 作ってみたから 送る。ヒーホー!』
要約するまでもない簡潔な文章だった。おそらく銅像のデザインを決めるための試作品なのだろう。
送られてきた人形は七体。丁寧に彫られた白木に、鮮やかな彩色が施されている。
魔人、赤魔導師、竜騎士…既に平穏な生活を送っている三人にとって
このような形で自らの姿を再現されるのは気恥ずかしいものだったが、
浮かび上がる旅の思い出に胸の内が暖められるのであった。
………だが、一つ大きな問題があった。
導師のローブをまとったレフィアの像。白いフードの猫耳と胸元のリボンがかわいらしい…のだが。
「これはちょっと…」
「う、うむ。これは止めてもらわなければ」
ふわりと広がったスカートの、裾の位置が高いのだ。ほんの少し視点を下げるだけで、
その中が見えてしまう。ましてや銅像などになって高い台に置かれれば…。
それどころか、そこはしっかりと作りこまれて色まで塗り分けられている。
これがドワーフのセンスなのだろうか。
もしこんな物をレフィアに見られたら。
頬を赤らめるアルクゥの横で、イングズは顔が青ざめるのを感じていた。
幸運なことに、彼女は鉱石採掘があるというので、ルーネスたちより遅れて来る予定だった。
ともかく見つかる前に隠さなければ。とりあえず引き出しかどこかへ―――と腕を伸ばしたその時。
「そうだよな、こんな白パンじゃ色気も何もねえし」
無造作にくるり、と人形を逆さにするルーネス。
「ル、ルーネス!」
アルクゥとイングズが固まる。その視線はルーネスの背後に釘付けられていた。
「ふーん。で、どんな下着ならいいわけ?」
「俺の好みは紫だけど、やっぱ黒とか? でも似合わねぇだろなあ」
だろ? と振り返るルーネスの前には、どす黒い怒りのオーラを立ちのぼらせたレフィアがいた。
ルーネスに弁解の余地は無かった。
「似合わなくて悪かったわねっ!」
レフィアの手刀がルーネスの顔面に振り下ろされた。衝撃はルーネスの体を突き抜け、
テーブルにビシリと亀裂が走る。モンクと空手家という二つの道をマスターしたレフィアの
豪腕に敵う者はいない。
昏倒し大の字に転がっているルーネス。なぜか最高レベルの回復魔法すら効かないので
アルクゥはパニック状態に陥っている。ドワーフたちに大至急警告の手紙を送れ、
とレフィアは仁王立ちでイングズを監視している。この状況をいかようにしたためるべきか、
とイングズは文机に向かって頭を抱えていた。
『ドワーフ土産 光の戦士フィギュア』が既に各地で流通し、絶大な人気を博していることを
彼らが知るのは後の話である。